Day11

朝、歩いていると、昨日競歩で追いかけて来た遍路さんを遍路小屋で見かけた。

どうやら、野宿していたらしい。

コンロを出して何か煮込んで食べている。

向こうもこちらを見かけると、気恥ずかしそうにしていたが、軽く挨拶を交わしそこを後にした。


室戸岬まで到達するには、後、一日半はかかる。

トンネルを抜け、発心の道場、全行程220キロの徳島県とさよならをし、やっと修行の道場、全行程385キロの高知県に突入する。

 

この道は良く覚えている。

全国コンサルの時、このトンネルを通り過ぎた所のガソリンスタンドで給油し、歩き遍路さんを見たからだ。

しかも、徳島県と高知県の境だったので尚更印象に残っている。

3年前の残像があるようだ。

あの時は車、今は歩き、この違いは絶えず変化して行く流れを選んで来たからだろう。

道はあるのではなく、道は作るものの意味がはっきりと分かる。

そちらの方が刺激的で楽しいし、遣り甲斐もあり、安全なレールの上では成長をしなく得る物が少ない。

一度きりの人生ならば、そんな人生だけは送りたくはないと強く思う。





高知の空気を暫く味わっていると、初老のおじさんが休憩をしていた。

なんと、その方、5年かけて区切り内をしているらしく、纏まった休みが取れたら、四国に飛んでお寺を廻り、今やっと、高知に突入したらしい。

一生に一度でいいから遍路を廻って見たかった、それを5年かけて実現する。

時間をかける程度は人それぞれ違うが、目的がある旅と言う物は素晴らしい物である。

この頃から区切り内で廻っているお遍路さんを沢山見かけたが、殆どの方が1国参りをしているようだった。

そして高知を終わらせ、次回は愛媛からスタートする。

そんな流れの人が多い。

しかし、薬王寺から室戸岬までの道のりは最初こそ海があり綺麗だが、段々と飽きて来るのが難点だ。

海からの照り返しも強く風も強いので、私の顔は痩せ細り、真っ黒に日焼けして、まさに「The 旅人」と言う雰囲気になっていた。





この室戸岬まで歩く道のりは気をつけなければいけない事がある。

それは、野根と言う町を過ぎたらコンビニは勿論の事、自動販売機すらないので、水分を補給しておかなければいけない。

これを怠ると、約15キロ(歩きで平均4時間)水分が全く取れない状況に陥る。

海沿いを延々と歩くので、日差しも強く、日陰も全くない。

最悪、熱中症にかかってしまうので注意が必要だ。

特に私の場合、2日前に体重を計ったら、9キロも痩せていたので食事と水分はかなりの量を取る事を心がけていた。

毎日、長時間、有酸素運動をしているのと同じ事なのでかなり痩せるのでは?と思い、4か月かけて無理やり10キロ増量して来たのだが、僅か9日で体重が9キロ減少するとは思ってもみなかった。

歩く事、有酸素運動の効果恐るべし!

もし、太り過ぎで悩んでいる人は歩き遍路に来ると、あっという間に減量が出来るだろう。

高額なジムや高額なトレーナーさんなんて必要はない。

黙々と歩き続ければ良いだけである。



今日はもう既に20キロは歩いたであろうか・・・やっと室戸市に入った。



と、言っても最御崎寺までは後、25キロ、室戸までの道のりは本当に長い。

港町にある集落を抜けて行くが、殆どが漁師さんらしく家の前に網やゴムで出来たズボンなどが干してある。

漁師町なのでスナックが数件あるが、その大半が潰れているようだった。

かつて景気の良い時はここで飲み明かしていたんだろう。

人影が殆どないこの町でもたまに出会う人から「お気をつけて」などの言葉をかけてもらえる。

大変ありがたい事である。

どうも歩くのが速くなったようで、このままだと午後1時半には宿に着いてしまう。

後10キロは歩けるなと考えていたが、調度良い場所に宿はないし、既に予約をしていたので、時間潰しに海辺に向かうが、波が高く引き上げて来た。

と、その時、野生の猿発見!

人間慣れしているのか全く逃げようとしない。

 

こちらは杖を持った男性なので襲われないが、女性であればザックを取られるかもしれない。

写真には写っていないが、5・6匹の集団で活動していた。


宿では、今日会ったおじさんと、アメリカから来た夫婦、女性の若い遍路さん一人と楽しい会話を繰り広げた。

アメリカから来た夫婦はスペインにある、カミーノの道を歩き、遍路にも興味を持って歩いている途中だった。

ヨセミテ国立公園の環境の仕事をしているらしく、ヨセミテの魅力を沢山教えてもらったが、カミーノの話にも興味が沸いて来る。

こうやって人と会話をし、見聞を広め好奇心を満たして行く事で世界が広がって行くのだろう。

スペインのカミーノの道・アメリカのヨセミテ国立公園、何時かは行こうと決心した瞬間であった。


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