桂浜の坂本竜馬像は遍路道から外れているので見られなかったが、今日も晴天で気持ちが良い。
しかし、ふくらはぎの筋肉痛が酷く歩くのが辛くなって来た。
気持ち的には歩きたいが、ふくらはぎを使う歩き方は激痛が走る。
従って、足首を曲げる歩き方ではなく、足首をなるべく曲げない歩き方に変更して歩いて行く。
パターンが壊れればパターンを変更し、その場に最適な戦略を考え、ドンドン変えて行くしかない。
33番の雪蹊寺には、ヨーロッパ系の顔立ちをした金髪ギャル2人が先達さんらしき人に説明を受けていた。
私を見かけると、「おはようごじぇーました」と訛った過去形で挨拶をして来る。
とても可愛らしい。
遍路には白人の人が、かなり多いのには吃驚する。
2日に1人は絶対に見かける。
普通であれば京都観光とか富士山とか行きそうだが、宿の予約一つでも苦労をする遍路で、しかも言葉もままならないのに勇気があるとしか思えない。
反対にこちらが勇気つけられる瞬間でもある。
今日は早めに宿を予約しようと、遍路道沿いのホテルに電話をするが、明るい部屋が良いのか、暗い部屋が良いのか尋ねられた。
一瞬考えた。
前にも話したが、遍路道沿いのホテルは大きな街でないと楽天などの旅行会社から予約出来ない。
ホームページすらないホテルが沢山存在するのである。
従って、家族経営の場合が多く、応対も通常では考えられない返事が返ってきたりする。
「明るい部屋でお願いします」
とにかくそう聞かれたので、そう返事をしておいた。
照明が明るいのか暗いのか、部屋の模様が明るいのか暗いのか、日があたるのか、あたらないのか分からないが、これも一つの経験である。
雪蹊寺から次の札所、種間寺までは6・3キロ、朝、ご飯を大盛りで食べて来たのにもかかわらずすぐにお腹が減る。
しかし、コンビニはどこにもなく食堂もない。
種間寺に着き周りを見渡したらお寺の前にパンの自動販売機が置いてあった。
街ではまず見かけない自動販売機だが、置いてあると言う事は需要があるのだろう。
そこで、アンパンとカレーパンを買うが(それしかない)聞いた事のないメーカーである。
何十年ぶりだろう、アンパンやカレーパンを食べるのは。
小さい頃、運動会で食べた記憶がある。
パン屋さんに行ってもワインに合うチーズ入りのフランスパンは買ったりするが、アンパンやカレーパンはまず購入しない。
このパンは具が全然入っていなかったが、お腹が減っていると、それなりに食べれるものだなと思い、懐かしい味を思い出した。
ついでに、ザックの中からプロテインを取出し栄養を補充する。
このプロテインのお蔭で足の筋肉が今では1.5倍になっている(腫れも多少あるが)
食事をガンガン取っているので、体重はあれから筋肉の分が多少増えただけで良い感じである。
種間寺から清滝寺に向かう。
大きな川の横を通りながら歩くが、景色が良い道は気持ちが良い。
清滝時の道は土佐市を抜けて打戻りになるので、街並みを見ながら進むが、やはり、楽な道はないものだ。
竹林を抜けて、山を登って行くのだが、足の腫れもあり相当キツイ。
何度もその場で立ちながら休憩をし、やっとの思いで清滝時到着、勿論、見晴らしは良い。
お寺を少し眺め休憩をしていると、先達さんらしき人が喋りかけて来た。
通しで歩いている事を話すと「ここまで来たら最後まで行くんでしょ?」と言われたので、「行くつもりです」と答える。
旅を始めた頃はゴールなんて遠い未来だと思っていたが、着実に1歩を踏み出す事により前へ、前へと進んで行ける。
まだ半分にも到達していないが、最後まで行くんでしょ?の言葉を聞いて「最後か・・・どんな気持ちになるんだろう」と「行けるのかな・・・」の思いが交差していた。
今日の宿に着き「明るい部屋」の理由が分かった。
工事をしていたので足場がかかり、その分明るい部屋と暗い部屋があるとの事だった。
「どこかでカツオのたたき食べれる場所はないですか?」と聞くと受付の人が居酒屋さんを教えてくれた。
シャワーを浴び、足のマッサージを入念にしてから出かける。
居酒屋に到着し生ビールを一気に飲むと、隣に座っていた常連さん夫婦が「遍路さんですか?」と聞いて来た。
そこから会話が弾み、その方がこんな事を言った。
「東京から長崎まで直線で結ぶと1000キロはないけど、高速道路を使い車で行った時が、約1200キロだった」と。
遍路道の全行程が1200キロと言ってもピンと来なかったが、具体的なイメージを出されると、そんなに距離があるのか?と、唖然とした。
「だから、遍路を歩き切る人は並の精神力ではない」「心が半端なく強くなる」とも言っていた。
その時、常連さんの仲間がやって来て、私に興味を持ったらしく色々と聞いて来た。
話を聞くとこの方、以前市長経験のあるお偉いさんらしい。
「あなたの年で遍路を廻る経験が出来るのは凄い事だよ、一生の財産になる」「普通、廻りたくても出来ない」「呼ばれた人だけが遍路を出来る」と、ありがたいお言葉を頂いた。
確かに遍路を廻る事も、また、遍路に来てから廻りきる事も、様々な問題を克服して行かなければいけない。
明日は40キロ歩こう。
その時そう決めた。
「とても楽しかったです、明日は早いので僕はこれで失礼します」
席を立とうとした時、今日の会計はお接待するよと、全額常連さんにお接待をしてもらった。
一期一会。
旅は素晴らしい物である。
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