Day19

昨日、宿で一緒だったお遍路さんがしきりにトンネル嫌だな、嫌だなと言っていた。

確かに嫌だが何でそこまで嫌なのか聞くと、どうやら約1キロの長さであるにもかかわらず、ただ白線が引いてあるだけのトンネルらしい。

と言う事は歩行者のスレスレで車が通って行く事になる。

聞かなければ良かったと後悔しても遅い、今からそのトンネルを通る。



こう言った長いトンネルは入り口に歩行用の反射タスキが置いてあるが、皆がそれを使うので午後を過ぎると反対側にしか置いてない場合が多い。

今日はまだ早い時間なので、入り口に全部置いてあった。



それを使用し車に分かるように歩く。

トンネルの中は車の音が反響して通常の何倍になるので耳栓なども使用する場合があるが、私は後ろから来る車が今どこら辺にいるのか音で確認する為にそのまま歩くのが多かった。


トンネルの中に入って行くと、案の定トラック・ダンプカーが、ガンガン通り過ぎて行く。

運転の上手い人はこちらに気が付くと少々避けて行ってくれるのだが、殆どの車がこちらの横スレスレで通って行く。

その時の圧迫感はかなりの物である。


なるべく早足で歩き10分でトンネルを抜けると、お遍路さんが休憩していた。

「このトンネル危険ですね」「いや~もう通りたくないですね」などの言葉を交わし先に失礼をした。


暫く行くと善根宿があり、その近くの畑の真ん中で仕事をしているおばさんを発見。



しかし、それは服を着た案山子。



遍路道には何故かこう言った案山子が多い。

人が間違えるくらいなので、カラスも間違えるのだろうか?しかし、良く出来た案山子である。


更に、この道から少し行くと、大阪遍路道とそえみみず遍路道に分かれて行く。

昨日の宿の遍路さんの話では、そえみみずより大阪遍路道を通った方が良いとの事だった。

私もその通りにするつもりであったが、遍路シールの案内がそえみみずに誘導する道で、気が付いたら、そえみみず入り口に来てしまっていた。

「しまった!間違えた・・・」

しょうがないので引き返そうとしたら、地元のおばちゃんが「そえみみずは登りやすい」と教えてくれたので、迷った挙句、そえみみずの道を行く事にした。

 

そえみみずの入り口に遍路小屋があり、そこの案内板には、この道は昔からの遍路道とある。

また、土佐の主要な道路でもあった為、坂本竜馬が14歳の時四万十川の防波堤工事の時通った道で、山内の殿様も幡多に向かう際、通った道と記載されている。

しかし、明治25年に廃道となり、近年遍路道として復活を遂げた道との事。



この道が半端なくキツイと知ったのは、それから10分後であった。


登り始めからいきなり数十メートルの急な階段を上る。

上がったと思ったら今度は一気に下がる、そして上がり、下がる、その作業を2回。

上がるのに必死で写真を撮るのを忘れたが、半端ないしんどさだ。

今日は寒く、服を余分に着ていたが、汗が一気に噴き出し一枚脱ぐ。

「この道、やばいのでは?」

と感じたが、雨が降り出しそうなので戻る気力もなく、そのまま山道に突入する。

約5キロの山道だが、行けども行けども、ずっと、クネクネした登り坂なのである。

みみずの様に曲がりくねっている事から、そえみみずと言う名前になったらしいが、登りばかりで一息つく所がない。

今日は大阪遍路道に行くつもりだったので、水分も500mlのペットボトル1本だけである。

喉がカラカラになって来るが、万が一の為に小出しで水分を取って行く。

台風の影響もあり、木は倒れ、道は荒れ果て、クモの巣にバンバン引っかかり、本当に人が通っているのか?と、不安になって来た。

この道は20人お遍路さんがいたら、1人通るか通らない位の割合だろう。

それ位、荒れ果てていた。



そのうち雨が降り出して来たが、幸い山の中なので雨はそこまで落ちて来ない。

天気が良ければ余計に喉が渇くので、どちらかと言うと助かった。




しかし、土を踏んで歩く道ではなく、散乱した木を踏んで歩く登りばかりだと、注意をして歩かないと転んでしまうので疲れる。


その時、はっと気が付いた、ザックの中にお接待で貰ったみかんがある事を・・・

それを水分代わりにし、何とか5キロの道を歩き切った。

殆ど下りがなかった所を見ると、出た場所にある四万十町自体標高があるのだろう。

 

そえみみずと大阪遍路道との合流地点で、知った顔の遍路さんと合流するが、「そえみみず通ったの?あそこだけは通りたくないな~」と、笑っていた。



時間はまだ昼前であったが、食堂を見つけたのでそこで早めの昼を取る事にする。

お遍路では、次のお店が中々ない。

また、調度良い時間に、調度良い店もない。

見つけた時に食べておかなければ、空腹のまま歩く羽目になるので、無理してでも食べておく方が無難である。

そこの食堂でラーメンと酢豚を食べるが、久しぶりのラーメンはうまい。

と言うよりも、歩き疲れて塩分を欲しているのでラーメンが食べたくなる。

普段ラーメンは食べないが、歩き遍路をしていると無性に食べたくなると皆さん言っていたが、その通りであろう。



雨も止み、歩き続けると、道の駅が見えて来たのでそこで一旦休憩をする。

その道の駅では皆がこぞってソフトクリームを購入していたので、試に買ってみるが、練乳が効いていて、とてもおいしかった。

先程の塩分と同じで、疲れきった後の糖分も美味である。


休憩をしてから、岩本寺に向かうが、やはり休憩をしての足のだるさは尋常ではない。

これがあるから休憩は取りたくないのだが、一息つくと頑張ろうと意欲が沸いて来るので、肉体的、精神的のバランスが大事になって来る。



午後2時、岩本寺到着。



本坊の中ではおばさん連中が天井を見上げていた。

ここのお寺は天井に張り付けられた、575枚の絵が有名なのである。



花鳥風月からマリリンモンローまで多種多様な絵が飾られている。

暫く眺めていると、突然雨が降り出して来たので、合羽を着て宿に向かうが、道が分からなく人に聞く。

その方が親切で俺について来いと、宿まで案内してもらい、宿に着くが、誰もいないし、誰も出て来ない。

インコだけが何かを喋っている。

しょうがないので宿の方を待つ間、近くにある酒屋さんでビールを購入する事にした。

アサヒのスーパードライをレジに持って行くと、レジのおばあちゃんが、その値段が分からないと言う。

「えっ?酒屋さんでしょ、何でかな・・・」と思っていたら、この村ではそんな高いビール誰も買わないと言っていた。

普段、値段を気にした事もないので、私もいくらするのか知らないが、発泡酒や第3のビールとそこまで値段が違うのだろうか?

価格表らしきものをゴソゴソ取り出してやっと買えたが、面白いハプニングがあるものだ。


ブラブラと歩き宿に戻ると、やっと宿の人が見えていた。

ザックは置いて出て来たので、私が既に来た事が分かっていたようだ。

開口一番「インコと喋った?可愛いでしょ!」と、そのおばあちゃんは満面の笑顔であった。


今日の宿では2日前に道の駅であった遍路さんと、スイスから見えた若い歩き遍路の方3人だけである。

スイスの方はネットのセキョリティ会社に勤め、仕事をしながら遍路をしているらしい。

私もそうだが、パソコン1台あれば、全世界どこにいても仕事が出来る立場って、そうそうないと思う。

ネットがない時代には考えられなかったので、大変ありがたい事である。

会社勤めだと、彼のように特殊な仕事をしない限りは、自由は度束縛されてしまう。

しかし、それと引き換えに安心感は多少抱ける(終身雇用制は崩壊しているのでそうでもないが)

特に、雄の本能として「自由」は重要であるが、家族を持つと「安心感」がないと、気が気ではないだろう。

となると、安心感を持ちつつ、自由であるビジネスが理想となるが、その地点に到達するまでが、至難の業である。(ビジネスの展開、家族の理解、好きな時に好きな事をする、女性関係など)

これはとっても、バランスが大事になって来るので、ここでスラッとは言えないが、いつかは、そんな事も話して行きたいなと考えている。


話は戻るが、そのスイスから来た人は、宿をどうやって予約しているかと言うと、泊まった宿の人に、調度良い距離のお勧めの宿を電話して予約してもらっているらしい。

多少、日本語が出来るなら宿予約出来るでしょ?と聞くと、テンプレートは喋れるが、向こうから質問が来た時、何を言われているのか分からないので、試行錯誤した結果このやり方が一番だと言う。

テンプレートが使えない理由は全世界同じであるが、旅の知恵は凄い物である。


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