Day29

石手寺をお参りするが、広すぎてどこがどうなっているのか分からない。

門にかかっている草鞋を皆さん摩っているが何かご利益があるのだろうか?

 

道後温泉近くのお寺と言う事で朝早くから観光客が訪れている。

遍路さんよりも、観光客や地元の人が多いようだ。

お寺の真ん中では大声で般若心境を唱えているお坊さんもいる。

「あっ!」

その時、昨日八丁坂で私を追い抜かして行った遍路さんと会った。

「どう?腰の調子?」

「騙しながら何とか動いています」

この方は区切り打ちで数年かけて廻っているお遍路さんだが、興味深い話をしてくれた。

以前、徳島県で数日間、宿が一緒になった母親と若者がいたらしい。

若者の方は病気で悩まされ、宿でもおかしな行動をし、顔つきが険しかったが、ある日突然とんでもなく穏やかになったと。

その表情の代わり様に同じ人物だとは思えなかったと言っていた。

遍路ではこう言った話を沢山聞く。

元々その方が持っていた気力が回復するのか、遍路で癒しを受けたのかは分からないが、本当に科学では説明出来ないような力が働いているとしか思えない場合もある。

だからこそ、多くの方が訪れるのかもしれない。


その方に挨拶をし、52番大山寺に向かった。

この大山寺に向かう途中、夏目漱石の坊ちゃんで有名な道後温泉の前を通る。

千と千尋の神隠しのモデルにもなった温泉だ。

 

皆、その前で記念撮影をし、花嫁姿の女性もいる。

愛媛で思い浮かぶのは、やはり、みかんと道後温泉だろうか・・・

旅館や民宿もこの近辺は物凄く多いが、何故か、この前を通るルートが遍路道になっているので不思議だ。


アーケード街を通り抜け暫くするとカレー屋さんが見えて来た。

まだ時間が早いのでやっていないが、カレーは遍路に来てから一回も食べていない。

地元ではインドやネパールの方が開いているカレーを月に何回かは食べに行くが、特にチキンにスパイスを付けたチキンティッカを食べながらビールを飲むのが好きである。


よし!今日の昼はカレーにしよう、松山ならどこかにあるはずだ。

 

緩やかな坂道を上り52番大山寺、53番円明寺と順調に来る。

勿論、街中だからと言っても皆さん挨拶はバンバンにかけてくれるので嬉しい。

これは本当に不思議だが若い女性でも遍路さんには向こうからきちんと挨拶をしてくれる。

普通の旅人はザックだけだが、遍路さんは菅笠と金剛杖を持っているのでまず間違わないのだ。


円明寺で納経を済ませると、住職からパンを3つ持って行けと言われお接待を受けた。

賞味期限を見たら今日までだったので、昼のカレープランが飛んだが、ありがたくそれを頂いた。

見た目はアンパンのようだが、種類が違うので一つはカレーパンだろうと思っていたら、1つ目は想像通り、こしあんパン、二つ目は粒あんパン、少々胸焼けしたが、まさか3つ続けてアンパンはないだろと思っていたら、まさかの白あんパンだった。

お接待大変ありがたく頂きました。



円明寺から2キロも歩くと直ぐに海。



この海岸性沿いを25キロ以上歩いて行く事になる。

遍路道は良く出来ていて、海に飽きたら山、山に飽きたら街と、絶えず変化して行くので長距離を歩いていてもそこまで退屈はしない。

これが遍路の魅力だろう。

ウォーキングマシーンで、この距離を歩けと言われても出来る物ではない。



海を歩いていると徳島での思い出や高知での思い出が蘇って来る。

この頃から旅が終わりに近づく寂しさを感じていたのかもしれない。


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