今日は朝から雨。
今までは宿に着いたら雨が降ったりして難を逃れたが、今日はそうもいかないようだ。
雨は歩き遍路の天敵でもあり、長い期間中必ず降るので皆さん雨具は用意して来ている。
私も合羽を着こみ、菅笠を被り、ザックにレインカバーをつけ宿を出る。
しかし、不幸中の幸いか・・・
泊まろうとしていた宿が満室で予約出来ず、今日はもっと近場の宿を予約していた。
海沿いの国道196号線を歩くが、時間が経つにつれ雨が強くなって来た。
特に海沿いと言う事もあり、バケツをひっくり返したような雨になった。
前が見えない・・・
少々雨宿りをし、ザックの中身も持っていたビニール袋で全部包む。
その間にも歩き遍路さんは何人も見かけたが、ポンチョタイプの合羽を着ている人、上下分かれた合羽を着ている人、傘を差している人などそれぞれ違う。
私はザックをすぐ取り出しやすいように上下分かれた合羽を選んだが、汗で蒸れるのが難点だ。
後、殆どの方は普通の靴に防水スプレーをかけて遍路を歩いているが、大雨が振り続くと靴の中が水浸しになり、ふやけてマメだらけになる。
私の場合、ゴアテックス製の靴を履いているので雨は何とかはじくが、トラックや、ダンプカーが通れば、容赦なく全身に泥水を被る羽目になる。
それをタオルで拭うが、歩き遍路をしていれば誰であっても1・2度はこう言った経験をする羽目になるだろう。
その後も雨は降り続け一向に止む気配はなく、汗で蒸れ暑くなり、そして、立ち止まると雨で寒くなる。
これと似たような光景をどこかで味わったような・・・
何を望んでいるのかも分からず、気ばかり焦っていた過去の自分ではないだろうか。
そう考えると雨の中を歩くのも悪くはない、こうやって自分との対話が存分と出来るのであれば。
昼近くになり食事をしたいのだが、雨で濡れた格好ではお店に入るのもいやらしい。
幸いにも地元の大きなスーパーがあったので、そこで弁当を購入しレジに持って行くと、「雨は大変ですね、遍路頑張って下さい」と若いバイトの女性が声をかけてくれた。
その一言が嬉しく勇気づけられる。
他の遍路さんも、このスーパーで買い物をしていたが、皆さん雨の中を長時間歩き疲れているようだった。
雨の中を5時間歩き続け、54番延命時に到着。
休憩所では多くの歩き遍路さんが、雨宿りをしていた。
慌てて宿を変更する人、宿の予約をする人、遍路さん同士での情報交換、雨は遍路さんを慌ただしくさせる。
54番延命時から55番南光坊に向かう途中、雨の中鼻歌を歌う遍路さんがいた。
それを見てこちらも随分と気が楽になり、雨が降るのが楽しくなって来た。
普通の生活で雨の中こんなに歩く事はまずないので、自分の感情の変化にフォーカスしてみるのも良い物である。
南光坊に着いたのが午後2時、そこにいた遍路さんもこの周辺で宿泊するらしい。
宿に早く行ってもまだ入れないので、そこで休憩をしていると、一人の遍路さんが喋りかけて来た。
どうやら、その方は医者から歩けないと宣告され、自分でリハビリを開始し、今では重たいザックを背負って一日40キロ近く歩いても平気だと言う。
御年80歳のスーパーおじいちゃんである。
この後の遍路旅で、このおじいちゃんと度々一緒になるのだが、凄まじく、半端じゃなかった。
さすがに国道は私の方が歩幅があるのでドンドン先に行くのだが、山道では忍者のように駆け上がって行き、私でもついて行けない。
もう一度言うが、御年80歳である。
この後の旅でも、この方について行ける歩き遍路さんは一人もいなく、皆、ただ驚愕しているばかりであった。
午後3時。
雨も止み、皆さんそれぞれの宿に向かったので、私も宿に向かうが、途中道が分からなくなり、通りすがりのサラリーマンに道を尋ねると物凄く丁寧に教えてくれた。
今日はビジネスホテルに宿泊なので、遍路さんとの会話はないが、雨の中歩いた疲労度は半端ないので、良い足休め、雨宿りになった。
洗濯をしにホテルの1階にエレベーターで降りて行くと、フロントを通らず乗り込んでくる場違いな派手な女性がいる。
2時間後。
乾燥にかけた洗濯を取り込み、1階でエレベーターを待っていると、その毛羽い女性が、また下りて来た。
私を見て気まずそうにしているが、私はこの女性が何者かは知っている。
場末のビジネスホテル、2時間、ボディソープの香り、毛羽い女性・・・ここでは言わないが。
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