Day4

強烈な筋肉痛で目が覚める、今まで経験をした事がない痛さだ。

一つ一つ動作を確認し体を解して行くが、今日はまた峠越えが待っている。

昨日の宿で一緒だった人達と途中まで一緒に歩いて行くが、私の体は思うように動かない。

見る見るうちに置いて行かれるが、何とか山を登って行く。

山を登る時は膝の痛みはないが、問題は登りがあれば下りもあると言う事だった。

昨日よりは小さな峠越えであるが、昨日の疲れが全然抜けきっていないので、歩きはじめてから1時間で足がパンパンになる。





下りに差し掛かった所で案の定膝に痛みがズキンと走る。

杖をついて痛みを半減するが一歩一歩が非常に遅くなる。

今日は13番近くまで行こうと決めていたので、これではどれだけの時間がかかってしまうのか分からない。

そこで、後ろ向きで下りて見たりしたのだが、それでも移動に時間がかかる。

そんなこんなで苦労をしていたら、後ろから歩き遍路さんが声をかけて来た。

膝を痛めた事を話すと、そうだったら斜めに下りて行くと膝に負担がかからないよと教えてもらい、左右交互で斜めに下りて行くと結構スムーズに歩く事が出来た。


これで下りは歩いて行くしかない。

もう少しすれば平地になるので、そこまでの我慢だ。


展望の良い所に出て景色を眺めていると、地元のおばあちゃんがやって来たので、話をすると、大正生まれで小さい頃から遍路さんを見て来たとの事。



今からデイサービスに行くと言うので、挨拶をして立ち去ろうとした時、お接待で100円を渡され「これで飲み物でも買いなさい、遍路気をつけてね」などの嬉しい言葉をかけてくれた。


遍路は特別な癒しを施してくれる場所でもある。

そして、その行為が勇気つけられ、よし頑張ろうと言う気持ちになって行く。

遍路している時、どれだけお接待に助けられたか分からない。

四国の遍路文化は改めて凄いなと認識させられた。



山も下り、川に差し掛かった所である事に気が付いた。

なんと、橋が決壊しているではないか・・・しかし、通る事は出来そうなので、そのまま川を渡り平地を歩いて行く。



ベテラン遍路さんの話では、4,5日目が初心者遍路にとって、一番精神的に肉体的にきつくなると教えてもらった通り確かにきつい。

慣れない長距離歩行、遍路ころがしの山越え、筋肉痛が治らない内にまた歩き続ける痛み、黙々と歩き続ける自分との戦い。

この時点で肉体的限界や遍路の精神的きつさを知り、やめてしまう人がかなり多いらしい。

考えて見ればそうだろう。

止めても誰も文句を言わないし、帰れば街での楽しい出来事が山ほどあるからである。

確かに4,5日目が街での生活を思い出し、何でこんな事をしているんだろうと思う、一番初めかも知れない。

遍路をやめるか続けるかは、そんな思いをどうするかによって変わってくるが、全ては自分次第なのである。

しかし、先程述べたように四国の人々にお接待を受けるとそれが力となるのだ。



雨が降り始め、黙々と県道沿いの山道を歩きやっとの思いで宿に着くと、靴を脱ぐ時、激痛が走る。


「このままではダメだ、何か対策を考えないと遍路を乗り切る事は出来ない」


そんな事を考えていると、宿の人が雨で濡れた私の靴の中に新聞紙を入れてくれ、今までのお遍路さんの話をしてくれた。

70過ぎの人達は歩くのが仕事、生まれた時から乗り物に乗った生活をしている人は、団塊世代の人達に歩きでは勝てないので競ってはいけない。

最初から無理して歩いて来た人は、その後足が壊れ、リタイアした人が殆ど。

最初の遅れは後でいくらでも挽回出来るが、最初に無理すると最後まで響く。


まるで私の心中を察しているかのような言葉だった。



宿に泊まっていた人達は素晴らしく、夫婦で車遍路している人、世界中でバックバッカーをしている人、大企業の重役さんだった人、などと、楽しい会話をさせてもらい、皆ゲラゲラと笑いながら人生観を語り合った。

その夜、遍路の厳しさを教えられた私は、パターンが悪ければ、パターンを変える戦略を考えていた。


Day3Day5

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